口を開けてボンヤリしていたら、やまんばがガラガラ声でケタケタ笑った。
「1200年以上もわたしたちは待ったんだよ!」
やけにハイテンションなやまんば。
藍はそのテンションについていけず「はぁ」と漏らしただけだった。
「この風呂にコツコツと妖力を溜めてきたんだよ!1200年!あんた考えられるかい!?」
「考えられないっすねー。」
ばんばんと背中を叩いてくるやまんばを藍はテキトーにあしらう。
正直色々と処理出来ないことが多すぎる。
すーっと冷たい風が頬を撫でた。
「あとはこの風呂を冷やして九木様に捧げるだけ。」
雪女が青白い顔でククッと笑っていた。
「くぎ?」
「九木様だ。妖怪の最高峰の一人だ。」
藍の問いには弓月がしっかり答えてくれた。
妖怪にもヒエラルキーはあるのか、とぼんやり思った。
一つ目小僧が盆踊りのような動きをしながら近づいてくる。
「妖力100%!不純物0の風呂!」
ケタケタ笑う。
藍を指してまた笑う。
「人間のあんたがこの風呂に触れるのは許されないのさ!」
いつまでもケタケタ笑い続ける一つ目小僧に藍はイライラした。
殴りたい気持ちを必死に抑えるためにぐっと拳に力をこめる。
そしたら突然、あることに気付いた。
あ、と思わず声を出す。
そういえば、私。


