その他の者も見てみた。
いつも風呂に来る客のなごりがそれぞれにある。
だが、普通の人間とはどこか違った。
ボサボサの髪。
やせこけた老女。
ホームレスのような身なりをしている。
「やまんばじゃ。」
「あぁ、確かに。」
藍には分からない者も、それぞれが勝手に自己紹介してくれた。
天邪鬼、送り狼、牛打ち坊、猫又、犬神、亀姫。
みんな妖怪だった。
黒い猫又はニヤニヤ笑っている。
今まで人間だと思っていた人たちが人間じゃなかった。
奇妙な妖怪の姿。
いや、弓月はちょっと幽霊じゃないかと疑っていたけど。
藍は呆然と目の前の光景を見ているしかなかった。


