「手伝ってくれ。対価は伊勢家の血、石上家の七支刀だ。有田藍がちゃんと帰ってきたらあんたの好きにしていい」
有明は段々自分の頭がはっきりしてくるのを感じた。
そして、目の前の人物の顔もはっきりと認識できるようになっていく。
この男。
伊勢家の次期当主じゃねえか。
何でそんな奴が、俺に。
「なに……が……」
「九木と過去へ行く。彼女だけ、未来へ連れ戻させろ」
過去、未来。
男の言葉の断片が脳内で反響する。
ようやく有明は合点がいった。
こいつら、俺に竜宮一族一子相伝の能力を使わせる気だ。
たくさんの兄弟がいた。
何百人も、竜神の血を継いだ、妖力も素質も申し分ない兄弟たちが。
だが、何の因果か一度の間違いで生まれてしまった有明に竜宮一族の一人のみが継げる能力が受け継がれた。
妖力も素質もボロボロだったが、未来移動の能力を受け継いだのは俺だ。
だから、次の竜宮城の城主になるのは俺だ。
そう、息巻いていた時期が懐かしい。


