『お』
『あ』
『いけましたね』
灰色がかった視界。
だんだんとそれが鮮明になっていく。
八つの目が、ひたりと有明を、ではなく、有明が写っている鏡を覗き込んでいた。
『起きてる?』
『起きてるよねぇ』
四人の人間が鏡を覗き込んでブツブツと話している。
どいつもこいつも、どこかで見たことある顔だ。
ぼんやりとそう考えた時、あっと思った。
こいつら、藍と一緒にいた、
「………」
声を出したつもりだったが、ヒューと木枯らしのような音しか出なかった。
すっと、細い目をした男が真上から有明を見下ろす。
だがその目は有明のおでこのあたりを見ていて、目が合うことはない。
そうか、人間は俺の姿が見えないんだ、と有明は思った。
だからこの四人は先ほどから鏡で有明の姿を確認していたのだ。
住田家の鏡。


