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ぐわん、と頭が大きく揺れた気がした。
ビシャビシャと顔に何かがかけられ、それが体に染み込んでゆく感覚。
水だ。
どこか、川の清い水。
マグマのように煮立った身体が、幾分潤いだ気がした。
それでも、全身がガンガン痛み、目を開ける力もなかった。
『起きろ。辛いのは分かるけど、起きろー』
『もっと川の水持ってこようか?』
『妖怪ってどうすれば回復するんですかね』
『葉っぱとか自然のものでも突っ込んでおこうか』
ぐわんぐわんと、音が頭に反響して激痛が走った。
音は意味をなさない。
身体と頭が痛すぎて、考えるということがそもそも不可能だった。
『これでどうか』
じわりと、舌に苦味が広がる。
どろりとした何かが、身体に浸入してくる感覚。
妖力だ。
自分のものではない妖力。
九木。
九木のだ。
おえっと戻しそうになる瞬間。
しゅわしゅわと、身体に染み込んでくるもの。
純粋な自然の味だ。
一瞬、すべての痛みを忘れた。


