藍はゆっくりと足を進める。
チリン。
可愛らしい音のはずなのに、どこか暗い。
ぞわりとする。
チリン。
足を進めるごとに聞こえる鈴の音は確実に大きくなっている。
風呂場の扉の前で藍は足を止める。
チリン。
開けたら終わりだ。
鈴の音は、警告のように聞こえた。
息を吐く。
吸う。
そして。
チリン、鈴の音を合図に、一気に扉を開いた。
「寒っ。」
そこは極寒だった。
クーラーつけすぎだ。
歯をガチガチと鳴らし藍はしゃがみ両手で体を抱きしめる。
冷たい霧で一面覆われ、何があるのか全く分からない。
「人間だ。」
「人間がいるぞ。」
やけに鼻にかかった声が周りから聞こえ顔を上げる。
いくつもの目が、藍を覗き込んでいた。
「……誰?」
藍がそう言っても誰も答えない。


