「恐竜の絶滅に関しては、隕石説を疑問視する声も多いですね」
天音がそう口を開いた。
地球の地軸がずれたことで環境が大きく変わっただけという意見。
急激な寒暖の変化についていけなかった恐竜だけが滅んだという意見。
千秋と藍は黙って天音の顔を見つめる。
「あとは、恐竜は絶滅してないという見方もあります。今の鳥類は恐竜が進化したものだと言う人もいます」
天音は滔々とそう述べた。
「まぁ、大昔の真相が何であれ、そこはそんなに重要じゃない。九木が別の時代で死んでくれれば済む話なんだから」
九木と繋がっているのは今生きている自然だ。
命は繋がっているとはいえ、一つ一つの生命は生まれて死んでを繰り返している。
6550万年前から今の時代まで一つの生命として存在できる生物はそういないだろう。
「いざとなれば、連れていかれた先の時代で東北の妖怪が九木の死を願えばいい。願いの口があるんだから」
そう言えば、藍は千秋に何とも言えない表情を向けた。
いちいち構ってられないので千秋はそれを無視する。
「問題は、九木に連れていかれる人が九木と一緒に死ぬことだ」
九木と一緒に過去に行く。
なんとか、人だけを元の時代へ戻す方法。
何かないか。
そういう能力を持った奴。


