「自然を滅ぼせば九木も死ぬ……」
ポツリと呟いた千秋の横顔を見る。
もういっそ、自然を滅ぼして九木を殺す方が楽かもしれない、などと言っている。
自然を滅ぼす。
森を燃やすか。
それとも上空から有害物質をばら撒くか。
いや、人間がそんなことをしなくても氷河期が来れば一瞬で終わるのに。
それか、隕石が落ちれば。
隕石。
藍は口をつぐむ。
それから、少しずつ口元が緩んできた。
「何ニヤけてるの。見苦しいから普通にしてなよ」
「ちょっと黙って」
千秋の言葉に応える間も藍の口角は上がったままだった。
胸がバクバクと快く高鳴る。
もしかして。
もしかして、私はすごい名案を思いついてしまったかもしれない。
『恐竜が絶滅した理由を知りたいんだ』
そう言って笑った蛍。
机の上には分厚い星座図鑑。
教室の窓は開いていた。
風に吹かれはためくカーテン。
ほんの少し前のことなのに、遠い昔のことのようだ。
『未だに何故恐竜が絶滅したのか分かってないんだ』
噴火、洪水、隕石、氷河期。
何が恐竜という種を絶滅に追い込んだのか。


