「どちらにせよ、二人のうち一人は死ぬそうですけど」
その二人は。
考える前に、桜は走り出していた。
腰にあるのは七支刀。
継承者が二人もいなくなるとかシャレになんないから。
そう言っていた千秋。
どこまで予想していたのだろうか。
自己犠牲とか、そんなものじゃないことは分かっていた。
千秋は他人のために命を差し出すような奴じゃない。
もっと損得勘定で考える。
桜の七支刀、佳那子の鏡、紫月の記録、妖力探知に優れた千秋。
鬼道学園として。
失って一番痛いのは。
逆に、失っても代用が効くのは。
妖力探知の、伊勢家の血だ。
ある程度の素質があれば、そこそこ妖力探知はできるようになる。
伊勢家ほど優秀でなくとも、探知能力は学園のほとんどの人が使える。
「桜くん!止まりなさい!」
後ろから制止の声が聞こえる。
だが、桜は止まらなかった。
一人いなくなろうが二人いなくなろうが、どっちだって変わらないだろ。
「変わるよ」と、千秋だったら返して殴ってでも止めただろう。
しかし、今は桜を止められる者は誰一人としていなかった。


