「牛木は不滅の妖怪だ。牛木を倒した者が、次の牛木となる。つまり、二人で倒したら、その二人が次の牛木になるんだ」
そうとしか考えられない、と千秋は言った。
どうやったのかは分からないけど、それしかないんだと言われた。
それしかないと言われても。
桜は千秋から目を逸らし、その隣の天音を見た。
彼女は、竹内家はどうするのだろう。
竹内家を守っていた壱与はもういない。
「蛍を知りませんか?」
鈴を鳴らしたような天音の声。
鬼道学園の者は皆一斉に顔を見合わせた。
「一緒にいたんじゃないんですか?」
「いいえ。昨夜から蛍の姿は見ていません」
桜の問いに静かに首を振る天音。
壱与が死んだ。
天狗も死んだ。
牛木は二人だった。
竹内蛍はいない。
一体どうなってんだこの状況、と桜は頭を抱えたくなった。
ここで、今まで黙っていた理事長が口を開いた。
「今一度、各地の寺社仏閣に竹内蛍らしき人物がいるか確認をとってみましょう。ただ、もしいなかった場合、」
理事長はそこで口を噤んだ。
「分かりました」
やけにあっさりと、竹内天音は頷いた。
全て了承しているといった顔で立っている。
実の弟のことなのに、物わかりが良すぎないか、と桜は思った。
もっと心配してもいいだろう。


