「何故壱与と天狗が死んだかの理由は置いといて、事実確認は合ってるよね?一体化したせいで九木が死んだら自然まで滅びることになる。だから、神に頼るのは待ってください」
つまり、まだ九木を殺すなと千秋は言いたいのだ。
いつになく焦った様子の千秋が桜には新鮮だった。
「返事がないのは肯定と受け取るよ。いいね?」
「ちょ、ちょっと待てって」
呆然とする重役たちを置いてさっさと鬼道学園を後にしようとする千秋を桜は慌てて止める。
「壱与が死んだってのは、本当なのかよ」
「当たり前。壱与の妖力が消えたんだ」
「いや、妖力は小さくなってるけどまだ在るだろ」
「それは東北の妖怪」
「はぁ?」
突然の情報に頭がこんがらがる。
うまく言葉を繋げられない桜に、千秋はひたりとした視線で話し出す。
「壱与と、東北の妖怪が牛木だ。千里眼、左手の毒、右手の時は壱与の所有。願いの口が、東北の妖怪の所有だよ」
有田藍はあれをダンと呼んでいたけどね、と千秋は付け足す。
壱与と、東北の妖怪が。
牛木の能力が、二つに。
なんでだ。
桜は処理しきれない頭のまま「なんで」とだけ絞り出した。


