不滅の妖怪を御存じ?











ズブズブと、あらゆる場所に染み込んでいく九木の妖力。
木々に、山に、川に。
それは深くまで浸透していく。

まずい、と思った時にはもう取り返しのつかないところまで来ていた。
九木が各地に木を一斉に生やしたのは、これを分からせないようにするためだったのだ。
木々に目が向いてる隙に、あらゆる自然物に自分の妖力を注ぎ込む。

これは、人類もろとも九木と死ぬ覚悟で神に頼るべきなのか。
鬼道学園で深刻な顔でそんな会議が行われていた時。

そんな時、千秋が天音を連れて鬼道学園に戻って来たとの知らせが桜の元へ届いた。


「戻って来たわけじゃない」


千秋の第一声はそれだった。
相変わらず憎らしいほどに堂々としている。
でも少しこめかみに汗をかいているところを見ると、だいぶ焦っていたのだろう。

突然の千秋の登場に桜も鬼道学園の重役たちも理事長も、ポカンとするしかなかった。


「壱与が死んだ。天狗も死んだ。九木は自身の妖力と自然とを一体化した」


早口言葉のように千秋がそうまくしたてた。

鬼道学園の面々は千秋と天音という到底手を組むとは思われなかった二人組の登場に衝撃を受けたままで、ロクに話を聞けていなかった。

だが、千秋は聴き手の様子など気にもかけずに話し続ける。
まるで一分一秒が惜しいというように。