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ほっそりとした顔。
ガリガリに痩せこけた腕。
ボロボロに崩れ落ちた小屋から出てきたのは青白い女性だった。
黒く深い髪は床につくほどに長い。
薄黄色の装束を着て、伏せがちな目。
その目と、左右の手の甲が仄かに青白く発光していた。
壱与だ。
藍は目の前のその女性に思わず見とれた。
じっと澄んだ光。
仏像のような、湖のような表情。
これ以上見入ってしまう前に藍は慌てて目を逸らした。
今惚けるのはまずい。
先に確かめなければならないことがある。
「ダン!」
藍が壱与の隣で座り込むダンを呼ぶ。
隣で千秋がピクリと反応した。
不審そうな目で藍を見てるのが分かったが、藍はそれを無視した。
「ダン、こっち来て」
そう言ってダンの手を引き寄せる。
竹内家には壱与の結界により他の妖怪は入れない。
それなのに、どうしてダンは竹内家にいたのか。
彼は妖怪ではないのか。
それとも、もしかして。


