「………ゆ、ゆづき」
気持ち悪い。
頭が痛い。
穴に近づくほど、妖力を強く感じ、頭ががグラグラする。
それでも、有明はなんとか這いつくばって穴の中を見た。
気絶して倒れている竹内蛍。
そこから少し離れた場所。
そこに、真っ二つに裂かれた弓月の身体。
羽が無残にあちこちに散らばっている。
有明はどこか現実感のないまま、その光景を見た。
九木は。
どこだ。
探そうにも、視界が霞んでほとんど見えない。
意識が飛びそうだ。
頭が割れるような痛みの中、低く落ち着いた声が降ってきた。
「貴様が、壱与か」
九木か、九木の声だ。
有明がそう思ったら、再び吐き気がこみ上げてきた。
おえっと、また吐く。
自分の妖力とか生命力とかが、まぜこぜになった何かが地面に吐き出される。
鈴の音。
リン、と。
耳鳴りなのか、聞こえた。
冷たく、ジメジメした何かがすぐ側にいる。


