あまりの圧力の妖気に、有明の動悸は激しくなり思わず膝をついた。
頭がガンガンする。
胸元にせり上がってくる。
吐きそうだ。
気持ち悪い。
やばい、消される。
危険な状況だというのは分かっているのだが、有明は動けなかった。
「逃げろ。消されるぞ、おぬし」
動けねえんだよ。
平気な顔をして立っている弓月に有明は怒りにも似た思いを抱いたが、何も言えなかった。
あまりの気持ち悪さにうずくまり耐えることしか出来ない。
薄く目を開ける。
霞む視界の先。
弓月が、九木の穴へふわりと飛び込んだ。
「……」
声を出そうにも出なかった。
地面が大きく揺れる。
穴の中の妖力が大きくなった。
視界がぐるぐる回転する。
洗濯機の中で回されてるような感じ。
おえっと、有明は吐いていた。
飛びそうな意識の中、なんとか這うように穴に近づく。


