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暗い暗い闇の中で、少年はどれだけの時を過ごしたか。
不思議と、閉ざされた中でも外の様子は分かった。
クニが滅び、また新しいクニが出来ていく。
気が遠くなるほどの時間、少年は人々の様子を見続けた。
オサは少年がこの空間に閉じ込められたのと同じ夜に、ナシムによって殺されていた。
少年を育ててくれた人はとっくの昔にいなくなっていたのだ。
『天皇幽閉!』
『平家滅亡!』
『焼き討ち!』
『倒幕!』
『挙国一致!』
様々な出来事があった。
人々は流れるように通り過ぎていく。
時代と共に、人々の衣服が変わり、生活習慣が変わり、言葉が変わった。
少年はその様子をただただ見ていた。
人々が歌う歌を口ずさもうとしても、口が開かなかった。
当たり前だ。
少年の身体は、この何百年ピクリとも動かない。


