バコンッと少年の周りが何か強い力で囲まれる。
口が、熱い。
口の中に何か、とんでもないものを入れられた気がする。
チリーン、とどこかで鈴の音が聞こえた。
その瞬間、少年は分かった。
自分の口の中に良くないものが入った。
だから自分は閉じ込められている。
そして、この口は絶対に開けてはならないと。
いや、正確に言うと、何も言ってはいけないと。
その日、妖怪たちは最強であった牛木が壱与の呪いを解けずに死んでいったと、あちこちで言い合った。
呪いは牛木の身体を少しずつ蝕み、最後に牛木は独りで息絶えたと噂された。
そして、壱与は牛木の力を封じる呪いをかけ、自分自身を封印した。
一人の少年が、死にかけの牛木に一本の矢を放ったことは、誰も知ることはなかった。


