『言うてはならぬぞ』


オサは少年にそれらを人に言わぬよう教えた。
身寄りない少年がこのクニから除外されるのを危惧したためだ。

魔を呼び寄せる者だとでも噂されれば、たちまちクニから追い出されるであろう。

少年は学んだ。

尻尾がいくつもある動物は普通ではない。
道の先で手招く青い手には着いて行ってはいけない。
森で木々の上からこちらを見下ろす黒い翼を持ったモノとは目を合わさない。

少年はオサに言われた通り、彼らとはできるだけ関わらないよう努めた。
彼らもまた、少年に関わろうとはしなかった。

だが、敵意は持っているようで、少年が森で動物を狩っているとしばしば邪魔をしてくる。

今日も少年は捕まえたうさぎを彼らに奪われ逃してしまったのだ。
太陽の位置が傾いていく。
時間だ。

少年は結局道中見つけた木の実と弓作りに使えそうな木をほんの少しばかり持って帰った。
帰り道、毛むくじゃらの何かに石を投げられた。
少年も当たり前のように石を投げ返す。

少々おかしなことはあるが、少年の生活はいたって平和だった。


『今年は実りが少ない』


クニの集まりで、誰かがそう言った。
今年は春から夏にかけて異常に寒かった。

雨が降り続き、日光がほとんどでなかったのだ。
森の動物たちも瘦せ衰え、共食いを始める始末。

食料不足の波は少年がいるクニをも襲い、歳をとりまともに働けなくなった者たちは山へと旅立った。
彼らはきっと冬を越す前に死ぬだろう。

そしてさらに悪いことは続いた。