アテルイの子孫が殺された次の日に、九木を訪ねたのは右近の死後が初めてだった。
弓月は何とも言えない気持ちで九木に会いに行った。
昨日まで息をしていた者がもういない。
人間はすぐにいなくなるものだから大したことではない。
そうは思っても、右近を殺した九木と対峙するのは気が進まなかった。
「右近は最期何か言っていたか?」
弓月がそう言えば、九木は緩慢な動きで目を向けた。
「右近?」
「昨日おぬしが殺した人間だ」
「あぁ、」
さして興味もなさそうに九木が答えた。
「あい、と呟いていたな」
あい、藍。
一瞬で弓月の頭の中で変換が行われた。
「そうか」
そうだったのか。
弓月は顔を上げられなかった。
黙って踵を返し九木のもとを去る。


