『瞬きをたくさんするの、ちょっとおもしろくないですか?』
『小指、好きなんだよなぁ、気付いたら触ってしまうんだ』
今まですっかり忘れていた記憶。
気にもとめていなかった。
恒世はたまに思い出したかのように目をパチパチしていた。
お鈴が好きだった都々逸。
耳に残っていたのだろう。
仁兵衛は疲れた時におでこに手を当てていた。
それから、それから。
気付いてしまえば、あらゆることが思い出されてくる。
知らず知らずのうちに、弓月は彼らの影響を受けていたのだろう。
癖を、感覚を、好みを。
「右近」
思わず右近を呼んだ。
ん?と顔を上げ弓月を見つめてくる右近。
その瞬間、弓月は初めて罪悪感を感じた。
今までもそれなりに感じていたのかもしれないが、自覚したのは今回が初めてだった。
「……何でもない」
子が、親から受け取るものを、弓月が受け取っていた。
言葉にすればそれだけのことだ。
それだけの、こと。
だが、その時の弓月にはそれが大きな罪に思えたのだった。


