不滅の妖怪を御存じ?






「父さん?」


そこにいたのは、死んだはずの蛍の父親だった。
だが、いつも笑みをたたえていた父の顔はただ無表情。
口元の皺も細い目も、小さい頃の記憶、何度かテレビで見た記憶と一緒だった。


「貴様の父親を殺したのは我だ。貴様は我らを目視出来ぬようだから、わざわざ化けてやったのだ」


父の顔で、父のではない声でそう言う。
蛍はその光景をボンヤリと見ていた。

今、自分の目の前にいるのは、何だろう。
きっと、妖怪というやつなんだろうな、とは思えた。
だけど、妖怪が蛍に一体何の用だろう。

じっと見つめてくる瞳に蛍は怯む。


「ヒト、人間。さっさといなくなればいいものを。川は汚れ、森は減り、いくつの生物が死んだと思っている。人間が生まれた瞬間から思っていた。ちょろちょろ、ちょろちょろと目の端で動きおって。目障りな」


ぶつぶつと呪いのような言葉を吐かれる。
蛍はその敵意のかたまりの言葉を黙って聞いていた。


「獣を殺し、魚を殺し、大地を自分たちのものとして占拠する。大地は誰のものでもないわ。水と生物と草木との、あらゆるものの共存地だ。人間が森を、生物を追いやった。いくつもの命が追い詰められて死んでいった。人が、殺した」


蛍の父親の考えでは、蛍は自然に尊敬の念を抱いている。
だから、竹内家の当主として九木と対峙することになっても九木に悪い印象をそこまで与えないだろう。
そう、考えていたのだ。

しかし、一つだけ、彼の予想は間違っていた。