乙姫は竹内家の当主を九木の元へ運ぶ弓月をじっと見ていた。
乙姫とて九木側に組した者だ。
だが、完全に九木の考えに同意というわけでもない。
人は滅べばいい。
滅べばいいとは思うが、あらゆる妖怪の命を犠牲にしてまで、とは思わない。
乙姫は弓月が消えていった森の深淵を見る。
反対されようが、批判されようが、誰かがやらなければいけないと、九木は考えたのだろうか。
乙姫がそう考えていた時。
タダダダッと土を蹴る音。
ゼエゼエとした息遣い。
何か、懐かしい匂いが乙姫の横を走り抜けた。
「有明?」
縁を切った息子が、弓月を追いかけて森の奥へ消えていった。
九木と、弓月と、有明と、竹内家の当主。
組み合わせが謎すぎる。
これから中で何が起こるのか。
こちらに火の粉が降りかからなければ良いのだが。
そう、乙姫は思った。


