不滅の妖怪を御存じ?






「作文も、絵も、写真も服も、右近が受け取るべきものだ。わたくしが受け取っていいものではない」


何言ってんだこいつ。
有明は桐の箱を抱えたまま後ずさる。

そこでハッと気付く。
なんで俺こいつのお願い聞いてんだ。

逃げるつもりだったのに。
九木のとばっちりを避けて遠くへ行くつもりだったのに。
バッと桐の箱を弓月へ押し返す。


「これはお前が自分で渡せ!つか、九木のことが一件落着したらまた藍と暮らせよ!楢柴数億もすんだったら新しい家くらい借りれんだろ」


有明がそうまくしたてると、弓月が静かな目で見てきた。
なんの感情も無さそうな目。

不意に、気味が悪い、と有明は思った。
と、同時に弓月が笑う。
その笑みは、諦めとか、悲しみとか、そんな感情を体現したような笑みだった。


「無理だ」


惚けていたら、聞き逃してしまうような呟き。


「わたくしたちは、壱与の目覚めと共に死ぬ」


腕を引かれた。
見たことのない天狗。
引かれるがままに有明は歩き出す。

弓月が有明から背を向ける。
話はもう終わりということか。
弓月の羽が広がる。
飛び立とうとするその瞬間。

壱与の目覚めと共に死ぬ。
その言葉が、有明の頭の中でカチリとピースにはまる。