「楢柴って、三大肩衝のか?ずっと行方不明だった」
「左様。売れば今でも数億から数十億にはなるだろう。藍が一人で生きていくには十分だ」
「天狗が持ってたのかよ……」
弓月は嘘を言っているようには見えなかった。
有明はおそるおそる胸に抱えた桐の箱を見る。
楢柴。
手にした者が天下を取ると言われた茶器。
信長、秀吉、家康が欲しがったものが今、俺の腕の中にある。
恐ろしいやら不安やらで、有明は次の言葉を続けられない。
楢柴は、江戸の明暦三年の大火の後からずっと消息が知れなかったものだ。
どうやったかは分からないが、天狗が盗んでいたらしい。
その時ふと、有明は弓月の言葉が気にかかった。


