『天音さんには弟さんもいらっしゃいますよね。』
『ええ。』
ちょうどテレビでも竹内蛍の話題に移ったので藍は少しどきりとした。
腰を浮かせテレビを見つめる。
竹内蛍の姉である竹内天音は、静かに無表情に画面に映っていた。
胸元まである黒髪はキッチリそろえられ、人形のように肌は真っ白だ。
いつもヘラヘラしている竹内蛍とは対称的に表情一つ変えない。
『確か、けいさんでしたよね。蛍と書く。』
『いいえ。弟はほたるです。漢字はそのままでいいです。』
竹内蛍。
ほたるという名前だったのか。
藍はじっと画面に映る竹内天音を見つめる。
黒縁眼鏡。
黒髪。
そして真っ白な着物。
やけに浮世離れした姿だった。


