不滅の妖怪を御存じ?






「僕はいけると思ってるよ。壱与は牛木の力を持ってるから、願いの口ですぐに九木の存在の消滅を願えば」


牛木の力。
その話を有明にしてもらったのが随分前のことに思えた。


「もはや、壱与の封印を解く以外に道はないと?」

「いや。あるにはあるよ。地球上の森林と生き物を根絶やしにすればいいのさ。奴らは自然から妖力を得ているからね。森や生き物が消滅すれば妖怪も消える。でも、これは現実的じゃない。別の方法もあるけど、出来ればやりたくない」


伊勢千秋がめんどくさそうにそう言う。

自然の消滅と共に妖怪は死ぬ。
九木も、牛木も、勿論弓月や有明だって。

藍はずっと前に蛍が話していた恐竜の話を思い出した。
6550万年前の恐竜絶滅。
隕石の衝突によって舞い上がったほこりが地上を覆う。

日光が届かなくなり地球上の生物はほぼ死んだらしい。
もしも、恐竜が存在していた太古の昔から妖怪がいたとしたら、その時に妖怪は恐竜と共に絶滅していたのかもしれない。

隕石落下説は確定した説ではないらしいが、もしもそうだとしたら、やっぱり自然は強いな、と藍は思う。
ほぼ全ての生物が壊滅したとしても、何万年か過ぎれば何てことないように新しい命が繁栄する。

図太いというか。
九木は人間に対して怒っているようだが、地球にとっては人間と妖怪が何をしようが大したことないのかもしれない。

人間がどんなに繁栄しようが、滅びる時は滅びる。
森や他の生き物だって同じだ。

妖怪や人間、他の生物が滅んでも、時が経てば新しい命が生まれる。

藍は窓の外を流れていく松の木を眺めながらそんなことを考えていた。