ガシッと有明も天狗に捕らえられる。
「安心しろ。命は取らぬ」
荒い息と共にそう言われる。
ハァハァと心底疲れた息づかい。
竹内蛍を押さえるだけでも体力をかなり消費してしまったようだ。
この天狗も損な役回りだと思う。
「あんた達は、どっちなんだ?」
「九木の味方だ。表向きは、な」
弓月が藍に宛てた手紙の内容を思い出す。
「本気で、壱与を使って九木を倒そうと思ってんのか?」
「そこまで知っておるか」
それは秘しておけ、と天狗に釘を刺される。
良い気なもんだ、と有明は鼻白む。
天狗は契約で守られているから九木と壱与の争いに巻き込まれても命を落とす心配はないのだろう。
俺ら他の妖怪は上級でない限りほとんどが死ぬであろうに。
はしゃぐ竹内蛍の声を聞きながら、有明は何だか冷めた気持ちだった。
今の有明の力では、この天狗から逃げられない。
仮に逃げられたとしても、この高度から落ちればぺしゃんこになる。
なすがままに天狗に担がれ空を飛ぶ。
上空から見下ろした街は、一面緑だった。
昨日まで栄えていた人間の文明など無かったかのように遥かかなたまで木々が生い茂っている。
分かっていたとはいえ、実際にその規模を見るとやはり衝撃だ。
あれだけ妖怪を脅かしていた人間の文化も科学も一瞬で飲み込まれてしまった。
勝てるのか?
有明の胸に不安が落ちる。
最強と言われる牛木でも、今の九木に、勝てるのだろうか。
ビュウビュウと風を切り裂いて進む。
竹内蛍と有明の二人を担いだ天狗は真っ直ぐに。
天狗達のかつての住処。
ここよりもっと南。
鞍馬山目指して飛び続けた。


