水流が穏やかになる。
もうすぐ海に出るらしい。
よし、早く海に行って海流に乗ろう。
有明が流れるスピードを上げようとした時。
ゴォッと、上から強い風が吹き、水流が大きく揺らぐ。
同時に感じる、ビリッとした妖力。
「天狗?」
何故こんな北の海の近くに。
九木の住処の山はもっと内陸にあったはず。
そう思って顔を上げたら。
「うぉぉぉぉーっ!なんだこれぇぇ!」
天狗が、一人の男を俵担ぎして、空を飛行していた。
何だあれ。
素でそう思ってしまった。
しかも、よく見れば担がれている男は竹内蛍だ。
「何!?俺空飛ぶ能力あったの!?」
「黙れ小童!」
「アイキャンフラーイ!!」
「黙れと言っておろう!」
竹内蛍が天狗を認知できていないのも状況をさらに悪化させていた。
フライ!フライ!と騒ぎながら足をバタつかせる蛍。
それを憤怒の表情で押さえつける天狗。
見えないってある意味良いことかもしれない。
有明はもう何も考えたくなくなった。
だが、そうも言っていられなくなる。
天狗の目線が、川面から顔を出していた有明に突き刺さった。
まずい。
そう思ったが、もう遅かった。
カッと鋭い風が飛んできて、水ごと有明を宙へ叩き上げる。
「貴様!あの小娘と一緒にいた妖だな!!」
水しぶきとともに宙へ放り上げられた有明。
天狗は蛍を抱えたまま一気に距離を詰めてくる。
「水が!!水柱が立ってる!何で!?」
はしゃいでいる竹内蛍の声。
状況に似合わないにも程がある。
こいつ何でこんなに元気なんだ。
絶体絶命の状況のはずなのに、有明はどこか他人事だった。
おそらく竹内蛍のせいだろう。


