「何でこんな短い内容なの。紙が勿体無い」

「おい捨てるな。何かあるかもしんねーだろ」

邪魔だから何も書いてない部分を捨てようとして有明に止められる。


「何かって?」

「まじないがかけてあんだろ、多分。何らかの条件が揃えば読めるようになるはずだ」

「ふーん」


そうなのか、と思い手紙を畳む。
牛木の封印を解く。
弓月はそう言うが、牛木といえば、九木よりも強いと言われる妖怪だ。

今封印されている牛木は壱与であるけれど、本当に眠りから覚ましていいのだろうか。
一番強い妖怪なのに。

藍は黙ったままじっと考える。

その様子を有明が不安そうに見つめていた。


「お前、天狗の言う通りにするつもりか?」

「有明はどう思う?」

「俺に聞くなよ」


困ったように目をそらす有明。
ダンが藍の袖をギュッと握っているのを見て、有明は投げやりに口を開く。


「もしも、万が一、お前が牛木の封印を解いたら、それで本当に牛木は九木を殺してくれるのかよ」

「いや、それは私にも分からないよ」

「つい数ヶ月前までは普通だったんだ。ダイダラボッチも、出世法螺も、コダマ達も、山の妖怪は九木の支配下にあっても元気でいたんだよ。なのに突然、九木が怒りだして、それからどんどん食べられていって……」


じっと目を伏せる有明。
いきなりの暗い様子に藍はポカンとする。