不滅の妖怪を御存じ?






はぁ、と理事長がため息をつく。


「有田藍を育てたという天狗も僕と同じ考えでした。大部分の妖怪を喰らい、人間を滅せるほどの妖力をもった九木を倒せるのは牛木しかいない。天狗は、有田藍に牛木の封印を解くよう進言していました」

「何故それを早く報告しなかった?」

「時間がなかったもので」

はぁ、と再び理事長がため息をつく。

千秋が言えなかったのではなく言わなかったことは理事長も分かっているのだろう。
親子ゲンカには見えないが、これは一応親子ゲンカなのだろう。


「有田藍は天狗に従い竹内家へ行くでしょう。彼女に手を貸すのは癪だけど、九木に殺されるのも癪なので、僕も牛木の封印を解く手伝いをしようと思います」


父さんはどうします?と、父が有田藍側につくはずがないことを分かった上で聞く千秋。
すでに道は別れていた。

鬼道学園は妖怪から人間を守るためにある。
けれど、妖怪を殺す力は人間にはない。
結界、札、鬼道学園がやることは常に守りで、受け身だ。


「千秋、お前と有田藍には、鬼道学園をやめてもらう」

ポツリと落とされた理事長の言葉に息をのんだのは桜だけで、千秋は「はい」と答えただけだった。