「何でそんなにビックリしてんの?」
「だって蛍、一回読んだら忘れないって……」
「そんな奴けっこういるだろ。」
「けっこうじゃないよ。ごく稀だよ。すごいレア」
「え?でも姉ちゃんもできるけど」
「……」
所謂天才と呼ばれる人達の中には、そういうことができる人もいると聞いたことがある。
けど、けど。
ムムムと考えこむ蛍を藍は複雑な気持ちで見つめる。
何だろう、親しい友人が、実は天才の部類だった、なんて。
変人だと思っていたのに。
天才かつ変人とか。
というか、竹内家の血が優秀なのか。
「蛍さ、なんでそんなすごい記憶力あるのにテストで赤点取りまくってたの?」
「俺覚えても理解できないからなぁ。姉ちゃんは読めば一発で何でも分かるし何でも応用できるんだけど、俺はそんなの無理だし」
あの人の頭の中どーなってるんだろうな、とケラケラ笑いながら言う。
確かに、竹内天音はその情報量いっぱいの優秀な頭脳で普段何を考えているのだろう。
穏やかな風が藍の髪を撫でる。
「とりあえず、ピエロ伝道者の始めから、聞いてみるか?」
蛍のその問いに藍はこくりと頷いた。


