やってきたのは地学準備室。
まともに使われておらず、様々な備品がごちゃまぜに置かれている。
古語辞典や柔道着まで置かれてあり、もはや無法地帯だ。
「あ、これ白雲母じゃん。パリパリはがせるやつ。」
床には地学で使ったのか鉱物が種類ごとに分けて置かれていた。
藍はその中から透明な白雲母を手にとる。
薄く剥がれていく白雲母。
この石の表面を剥がす作業はプチプチ潰し並の中毒性がある。
「藍、その辺に洗濯のりない?」
「何それ。」
「俺がこの間置いておいた。スライムの材料だよ。」
「あ、あった。」
洗濯のり。
積み上げられた英和辞典の上にそれはあった。
それから藍は黙々と白雲母を剥がし続けた。
しかし三分も経たないうちに静寂は破られた。
「できた!」
「早いね。」
「ほら見ろよ。」
竹内蛍が自慢気にコップを差し出してきた。
一応藍もそのコップの中を覗き見る。
ツヤツヤテカテカしたデロッとしたものが入っていた。
竹内蛍がやったのか、黄色く色付けされている。
「これ、やるよ。」
「え。要らない。」
「遠慮すんなって。」
グイグイと半ば無理矢理スライムを押し付けられ、藍は仕方なくそれを持ち帰った。
捨ててしまうのもなんだか悪い。


