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「赤色って別れを思い起こさせるよね。」
そんな気がしない?と首を傾げて尋ねてくる右近。
1986年。
スペースシャトル、チャレンジャー号が爆発し乗組員全員が死亡した年。
ロシアでチェルノブイリ原子力発電所で事故が起きた年。
自分達の手に負えない物で人間たちは何を得たいのか。
甚だ疑問だ、と弓月が思っていた1986年、夏。
アテルイの子孫、57代目の右近という少女と共にいた。
新潟県。
東北の山奥でアテルイと出会い、住処を転々と南へ移し、そうしてまた北へ。
千二百年かけて東北から九州へ。
また北へ戻り新潟へ、の移動をしてきた。
右近の子供が生まれたら、七百年ぶりに恒世と住んでいた場所へ戻ってみようかと弓月は思う。
奥州藤原氏がかつて栄えていた場所。
恒世が見たがっていた金の寺はまだあるらしい。
「弓月ー」
シャクシャクとアイスを食べながら右近が弓月を呼ぶ。
ショートパンツから伸びる細長い足をブラブラと動かす右近。
目線だけを右近に向ける。
「最期の言葉は何がいい?」
ふふっと笑いながら右近がそう聞いてきた。
一瞬何を言われているのか分からなかった。
いや、それよりも。
弓月は右近が笑ったことに少々戸惑っていた。


