「じゃあさ、俺は藍って呼ぶからさ、藍も俺のこと竹内くんじゃなくて名前で呼んでよ。」
「……すごく今更なんだけどさ、」
「なんだよ。」
藍は視線を下げ「竹内蛍」と書かれたノートを見る。
「竹内くんの名前って、ほたる?けい?どっちなの。」
高校生活が始まってから誰よりも長く一緒にいたというのに、藍は竹内蛍の名前の読み方を知らなかった。
自己紹介のときはボンヤリして聞いていなかったのだ。
なんとなく気まずくて目を逸らしたくなったが、それも失礼かと思い藍は竹内蛍の目を見つめる。
キョトンとした顔が目の前にある。
やがてゆるゆると口元が緩み、ブッと竹内蛍は吹き出した。
「有田っ、お前っ!」
「有田はやめてって。」
「あっ、そうだった。」
クックッと笑いながら竹内蛍は藍の肩を何度も叩く。


