「有田って面白いよな。」
「ねぇ、その有田って名字呼びやめない?」
「え、なんでだよ。」
「私嫌いなんだよね、自分の名字。」
「えー、いい名字じゃんか。」
田んぼ有りの有田!と竹内蛍はテキトーなことを呟く。
「ありって言葉がある時点で嫌なの。虫の蟻を連想させるから。」
「あれ?有田って虫嫌いだっけ?」
「蟻限定で嫌い。小さい頃棒付き飴持ったまま寝てたら起きた時身体の周りに蟻がたかっててそれ以来苦手。」
「あー、それはトラウマだな。」
ガラガラッと前方で音がした。
地学講義室の重い扉を誰かが開けたのだろう。


