不滅の妖怪を御存じ?










昨夜の弓月の意味深な発言のせいか、藍は学校の授業に全く身が入らなかった。

休み時間の度に竹内蛍に大丈夫かと心配されたぐらいだ。
余程藍はボンヤリしていたのだろう。

それでも、一つだけいいことがあった。


「有田今日は歩くの速いな。」


移動教室のときにいつのまにかひょいと横にやってきた竹内蛍にそう言われた。
藍は今自分が歩いている廊下を見回し口角を上げる。
素晴らしい景色だ。


「だって今日はこんなに廊下に人が少ないから。」

「人?」


藍の学校の廊下はいつも生徒やら学校関係者で人が溢れかえっている。

深い紺色の浴衣を着た仏頂面のおじさんが歩いていることもある。
何故か彼らはあからさまではないにしろ、感じ取れる程度に藍のことを睨んでくるのだ。

だが、そんな彼らも今日に限っては一人もいなかった。
人が少ない廊下は歩きやすい。