不滅の妖怪を御存じ?





何て言った?
今、あの男子生徒は何と言った?

有田藍は一人で話し続けている。
まるで誰かがいるかのように。
屋根に向かって。

何なのだろう。

藍はぼんやりと冷たい廊下を見つめた。
弓月は何者で、弓月が見える風呂の客は何者なのだろう。

答えは分からなかった。

でも、一つだけ分かったことがある。

弓月は何か、私に隠し事をしている。

それから藍が話を切り出せないまま数ヶ月が過ぎてしまった。


「藍。」


弓月がそう呼びかける。

タンッと軽い音がした。
いつものように軽い動作で、弓月が屋根から降りてきた。


「隠し事はすまなかった。だが、今はまだわたくしからは言えないのだ。」

「それは、」

「遅かれ早かれ、お主が結婚するときまでには教えよう。」

弓月はそう言うと、スッと消えてしまった。

逃げられた。

藍は何も言えないまま立ちつくしていた。