「かわいい子だよ。兄弟にしてあげたら?」
「冗談じゃねーよ!そんなわけわかんねえ妖怪!」
有明の言葉でようやく確信が持てた。
この小学生くらいの男の子は皆が言っていた東北の妖怪なのだろう。
だが、どこからどう見ても危険には見えない。
「君、名前は?」
「何話しかけてんだお前バカじゃねえの!?」
後ろで有明がギャーギャー騒いでいたが無視して藍は男の子に話しかけた。
だが男の子は藍に困ったように眉を下げた顔を見せた。
そうして両手をふいと上げて指で口の前にバッテンを作った。
いわゆるお口ミッフィーちゃん状態。
「話せないの?」
藍がそう尋ねれば男の子はコクリと頷く。
話せない妖怪。
そんな妖怪もいるのだな、と藍は思った。
「文字は?書ける?」
筆談はどうかという藍の提案に男の子はコクリと頷く。
牢の中に何か書けるものはあるかと藍は探そうとした。
すると、牢の外でドタドタと誰かがやってくる音がした。
「……母さんだ。」
有明がぼそりと言うと同時に、乙姫様と五人ほどの有明の兄姉たちがやってきた。
その顔は皆一様に険しい。


