「弓月っていう天狗の手紙にも書いてあったけど。」
「何が。」
「九木を倒せる妖怪なんて牛木しかいないってこと。」
牛木。
牛鬼。
壱与。
あっ、と桜は目を瞬く。
ようやく、分かった。
千秋たちがやろうとしていることが。
そのとてつもない事の重大さに、桜は何故か笑えてきた。
「竹内天音に頼んで、壱与の封印を解かせてもらう。」
正気か、と思わず桜は千秋の顔を見やる。
ただニヤリと笑みを返された。
信じられないような気がした。
目の前のこの男は、1700年間沈黙を続けてきた最強の妖怪を放とうとしている。
ぶるりと、背筋が震えた。
それは武者震いだと信じたい。


