「おい、藍。」
有明に声をかけられてハッとした。
藍はバッと後ろを振り返る。
眉間にシワを寄せた有明と目が合う。
「まずいぞ。」
「何が。」
やけにキョロキョロと目を動かし不安そうな有明。
何か危険が迫っているのだろうか。
藍が黙っていれば、ゆっくりと有明が口を開いた。
怯えたように、震える声でこう言った。
「東北の妖怪が、竜宮城に来た。」
東北の妖怪。
それが何なのか藍は最初分からなかった。
だがすぐに合点がいく。
鬼道学園でも騒がれていた妖怪だ。
能力不明な妖怪。
目覚めてすぐに動き出した妖怪。
そうか、東北の妖怪は竜宮城を目指して移動していたのか。
一人考え込む藍に、恐怖に固まる有明。
妖力を感じない藍は知る由もなかったが、その東北の妖怪は着実に藍がいる牢の方へ向かってきていた。


