不滅の妖怪を御存じ?






藍が弓月は幽霊じゃないかと疑い始めたのは高校に入ってからだ。
それまでも、弓月のいきすぎた人見知りは奇妙だと思っていた。

そして、都合が悪くなるとふっと煙のようにいなくなってしまうことにも。

元々藍が変人として位置づけられていた理由も「何もないところであたかも誰かがいるように話すから」というのだから。
始めに聞いたときは自分でも気づかないうちに独り言を言っているのかと思った。

だが、常にどこかモヤモヤしていた。

決定打だったのは、高校で同じクラスになった男子生徒の会話を盗み聞きしたときだった。


「有田藍って見た目は普通だよな。」

「確かに。変人って聞いてたからピンク色の頭でもしてるのかと思ったけどな。」

「案外普通だよな。」

「いやいやお前ら、有田藍は完全に変人だよ。」

「お前、何を根拠に。」

「俺、有田藍とは家が近いんだよな。で、あいつの家すっげーボロい銭湯経営してんだよ。」

まじかよー、とゲラゲラ笑う男子生徒の声。
藍はそのときどうしようもなく廊下に突っ立っていた。

教室にいる金魚にエサやりに来ただけなのにどうしてこんな状況になったのか。
タイミングの悪さを心の中で嘆く。