「弓月は人間を嫌ってたのかな。」
間髪入れずに「当たり前だろ」と有明のおとなしい声が返ってきた。
そうなのか。
胸にストンと落ちてくる悲しさ。
藍が下を向いたことに気付いたのか、有明が振り向く。
「別に、弓月だけの話じゃねえよ。妖怪は基本的に人間が嫌いだ。」
ボソボソと呟く有明。
フォローのつもりなのだろうか。
「有明はどうなの?」
「好きではないな。」
「そっか。」
妖怪は大抵人間が嫌い。
頭にそのことをよく埋め込んでから藍は有明を見つめる。
「なんで嫌いなの?」
「はぁ?」
有明の茶色い目が見開かれる。
「なんでって、妖怪の住む場所に侵入して好き勝手やるからだろ。つか、環境破壊するから。」
環境破壊。
それが妖怪に何の関係があるというのか。
藍の顔を見て何も分かっていないと察したのか、有明が一つため息をつく。


