「近い将来、食糧危機が必ず訪れる。人口増加、環境破壊。原因はいくらでもあろう。人間がやったことで自業自得じゃがの。」
ペラペラと喋る弓月。
藍はぼんやりと「なんで弓月は虫の話を始めたのだろう」と不思議に思っていた。
ふと下を向いて気付いた。
藍が夏休みの課題として書いていた作文。
『食料自給率とこれからの食生活。』
書いている内容はありきたりだ。
米食え、芋食え、地産地消。
その三つに尽きる。
「食糧が足りなくなったら昆虫を食べる。人間は代用品を見つけるのが上手い。これは褒め言葉ではないぞ。人間の短所として言っている。」
「ふーん。」
また弓月の一人演説が始まったか、と藍は思った。
ある時は医療に対して、ある時は家電製品に対して。
弓月は人類の進歩を否定するようなことばかり言っていた。
便利さは何を犠牲にして成り立っているのかよく考えろと、誰に、という相手もなく訴えていた。


