蛍は星や宇宙が好きで誰彼構わずそれらのロマンについて熱く語る。
幼少の頃に本で読んで宇宙についてあらかた理解してしまっていた天音にとって蛍の話は退屈以外の何物でもないのだ。
だから、ここ数年蛍の話などまともに聞いていなかった。
「蛍が京都に戻ってきたら、ちゃんと聞いてやりなさい。そうすれば分かるだろうよ。」
そう言って父はよっ、と立ち上がる。
もう話は終わりなのだろう。
蛍の話を聞いたところで得るものは何もないと思うが天音は一応頷いておいた。
しかしそれから十年間、蛍は一度も本家に帰ってこなかった。
蛍がいなくなり、両親も仕事で家にいないことが常になった。
そうして、広すぎる家には天音だけが残った。


