「よく考えてごらん。お前が分かっていなくて、蛍が分かっていることを。」
父の言葉に、分からないですと天音は即座に答える。
「今日話してよく分かった。お前自身は危なくない。けれど、お前が、あることを分かっていないというのは危ない。いずれ、回り回って竹内家の脅威になるかもしれない。」
分からない。
世の中の全てを理解していると言ってもいいほど私は知識がある。
勿論、それを応用し考えることも出来る。
なのにそれが脅威となる理由が全く分からない。
むしろ世間を何も知らない蛍に家を預けることの方が問題ではないか。
天音と父は互いに探るような目つきで見つめあった。
なんとも居心地の悪い時間が続く。
先に沈黙を破ったのは、父だった。
「お前、蛍がよく話している星の話をちゃんと聞いているか?」
天音は表情を変えずに「いいえ」とだけ言う。


