不滅の妖怪を御存じ?





お父さんはこの話を蛍にはしていないだろう。
今までの二人の様子からそのようなことは見られなかった。

ならば、お父さんがお亡くなりになった後は私がしっかりこの竹内家の使命を守っていかなければ。

天音が一つそう決意を固めた時。
父が作り上げたトランプタワーを一瞬で崩すようにこう言った。


「次の当主は、蛍にしようと思っている。」


え、と天音は目をパチクリさせた。


「それは、蛍が男だからですか?」


やっとのことで言えた言葉。
しかし父はまた無表情にトランプタワーを崩してくる。


「いいや。蛍がちゃんと物事を分かっているからだよ。」


そう言う父に、グラリと天音の世界は傾けられた。
あれ、え、なんで?
と疑問詞しかでてこない。

何時ものように、筋道をたてて論理的に、因果関係をつけて考えることが出来ない。
なぜ、なぜ父は私たちより蛍の方が物事を分かっていると言うのだろう。

蛍は星のことしか知らないじゃないですか。
私だって宇宙の始まりだとか星の誕生だとかは本を読んで知っています。
それ以外にも、政治経済法律株取引民俗学歴史、私は世の中をたくさん知っています。

絶対に、蛍よりもたくさんのことを知り、理解しています。
なのに、何故?

どこをどう話したかは覚えていない。

ただ天音は思いつくままにペラペラと話していたように思う。
父の言葉がどうしても納得出来なかった。