「……妖怪と、なんらかの関係があるのではないですか。」
「正解だ。まぁ、人間で勝手に滅んでいく場合もあるが、大抵は妖怪がちょっかいを出している。災厄を運ぶなんていう大層な妖怪はあまりいないが、有る程度の妖怪であれば人間同士に不和を引きおこすことが出来る。」
森の妖怪は畑の養分を全て吸い取り不作にする。
海の妖怪は津波、洪水。
はたまた人間には妖怪が見えないことをいいことに家に火を放つ、など。
「妖怪は人間が嫌いだ。成功していい気になっている人間がいればいてもたってもいられないんだろうな。」
だったら、1700年もの歴史を持ち、日本一財力があるという竹内家は何故滅びないのか。
「壱与の封印によって貼られた結界で、妖怪が入ってこられないからですね。」
天音の言葉に父は頷いた。
「我々竹内の一族の使命は壱与の封印を守ることだ。」
「……壱与はどこに封印されているのですか?」
「分からない。だが竹内の敷地内のどこかにはいる。」
曖昧な父の言葉。
天音は父の目をじっと見つめて考える。
人間に妖怪は見えない。
だから私たちには封印された壱与は見えない。
天音は下を向く。
これで竹内家にいる妖怪のことは分かった。
一つ天音の頭の中の箱が満たされた。


