不滅の妖怪を御存じ?




数秒の沈黙。
「ふっ、」と父の笑い声が落ちた。



「仕方あるまいな。天音は好奇心旺盛だから。」


ふっ、ふ、と父は笑いながらそう言った。

これは何だろう。
何がおかしいのか分からなくて天音は当惑する。
急いで頭の中の情報を整理しなくては。

父がこんな風に笑ったのは今までに七回あった。
一番新しい出来事では蛍が星について一時間も語り続けた時のだ。

あの時と今の状況との類似点は何だろう。
それが分かれば父が今笑っている理由も分かるだろう。

唇に手をつけじっと天音が考えていると、父が穏やかな顔で話しかけてきた。


「うちには、壱与という牛鬼がいる。あ、いや、今では鬼ではなく木という表記になるがな。さて、天音」

「はい。」

「盛者必衰という言葉があるだろう?」

「平家物語ですか。」

「そうだ。栄える者は必ず滅びるという言葉だ。藤原の摂関政治は約200年で終わった。奥州の藤原氏は100年、江戸幕府は265年。東ローマ帝国はなんと1300年も続けた。だが、結局滅んでしまった。さて、どんなに栄えた者でも最終的には滅びの運命からは逃れられない。何故だと思う?」


物事には始まりがあれば終わりもあるから。
まずパッと頭に浮かんだ言葉を天音は打ち消した。

父は先程まで竹内家にいる牛木について話していた。
ならばこの問いはそのことに関係するはずだ。