「さぁな。先のことは、まだ分からんよ。」
はぐらかされた。
父の軽く微笑みを浮かべた顔からすぐに分かったが、天音は表情を変えなかった。
そこでその会話は終わった。
だが、数ヶ月後。
蛍が岩手の分家に預けられることとなった。
父が天音を恐れ、次期当主の蛍を守ろうとして。
天音自身は弟である蛍をどうこうするつもりなんて全くなかったのに、父の早とちりにより姉と弟は離された。
これにはさすがの天音も眉を少し上げた。
「お父さん。」
木枯らしが吹く日だった。
縁側に座りお茶を啜る父に天音は声をかけた。
「なんだい?」
振り返らないままの父。
天音はしず、と一歩父に近寄った。
「私は、蛍を傷つける気などありません。」
キッパリと、天音は言い切った。
カラカラと落ち葉が地を転がる音がする。


