「有明。」
「……なんだよ。」
ギロリと、茶色い目が睨みつけてくる。
乙姫に言われたことが余程こたえているようだ。
親に家を出て行けと言われる。
それはどんな気持ちなのだろう。
睨みつけてくる茶色い目を見つめながら藍は口を開く。
「竜宮城に関しては有明の方が詳しいでしょ。ここから出たいの。手伝って。」
一気にそうまくしたてた。
けれど、有明はピクリとも動かない。
「無理だ。つか、俺は出たくない。」
生気のない声。
虚ろな目。
有明って気分の上下が激しくてめんどくさいな、と藍は思う。
「なんで。」
「ここにいればずっと飯が食えるし、安全だし、一生ボーッとして暮らせる。」
なんだそのニートみたいな思考。
いやでも有明は見た目子供だからニートにはならないのかな。
藍はなんとか有明に発破をかけようと言葉を絞り出す。
「有明、そんなんじゃあんたは食って寝てうんこするだけのうんこ製造機だよ。」
「……もっとマシな例えないのかよ。」
呆れたような目と、目が合う。
ここにいれば安全。
それは本当だろう。
でも、有明はここに居たいと思っているのか。


